サッカーの試合をDAFO(SWOT)分析スペインサッカーコーチングコース・レベル2で、試合の分析方法を学びました。レベル3のメソッド論の授業では、さらに「試合のどこに焦点を当て、分析するのか」「その分析した結果からどのような対応策、解決策があるのか」「解決策を実行するためのトレーニングメニューをどのように作成するのか」を学びました。
DAFO(SWOT)分析日本では「SWOT分析」と言って、主にビジネスシーンで使われる分析方法だと思います。ここではスペイン語のDAFOで書きます。
D(Debilidad:弱み):内的要因(自チームの弱いところ)
A(Amenaza:脅威):外的要因(相手チームの強いところ)
F(Fortaleza:強み):内的要因(自チームの強いところ)
O(Oportunidad:好機、チャンス):外的要因(相手チームの弱いところ)上記の4つを念頭に置いて、試合観戦しながらメモを取ったり、ビデオで録画した映像を分析ソフトを使って詳細に分析します。私たちのクラスでは、バルサのトレーニング施設に行き、バルサ・フベニールA(19歳以下)対エスパニョール・フベニールAの試合を観戦し、メモを取りました。バルサのスカウティング担当者から、その試合の録画したビデオをもらって詳細に分析しました(バルサのスカウティング担当者は前にコーチングスクールで教えていたので、私たちのクラスの先生と友達でしたし、私たちも彼から教わったことがありました)。何をどのように分析するのか
DAFO分析から1つを選択します。例:(Amenaza:脅威):外的要因(相手チームの強いところ)「どのプレー状況で、どこで、誰が、何を、どのように行っているのか」を具体的に分析します。分析を始める前に「プレーの状況における行動13項目」を書いておきます。局面:攻撃モーメント:組織的攻撃行動:
1. ボールの出口(zone 1からzone 2へボール運ぶ。ボールの出口を探す)
2. プレーの前進(ボールをzone 2からzone3へパスかドリブルで運ぶ。ハーフラインを超える)
3. ダイレクトプレー(自陣DFラインやGKから浮き玉で相手コートにいるOFラインの選手にボールをパスするプレー、相手DFラインの背後を狙うプレー。中盤を経由しない)
4. ファイナルゾーンの攻撃(相手コートzona 4で行われる攻撃)モーメント:守備から攻撃への切り替え行動:
5. カウンターアタック
6. 攻撃の再構築局面:守備モーメント:組織的守備行動:
7. ボールの出口への守備
8. プレーの前進への守備
9. ダイクレクトプレーへの守備
10. ファイナルゾーンの守備モーメント:攻撃から守備への切り替え行動:
11. プレッシング
12. 後退
13. プレッシングと後退(例:OFラインの3人、4人で相手にプレッシャーをかけて、DFラインとピボーテは後退する)※「プレッシング」「後退」「プレッシングと後退」は、攻守の切り替えの場面でしか存在しません。・4つのモーメント:組織的攻撃、組織的守備、守備から攻撃への切り替え、攻撃から守備への切り替えモーメント:組織的攻撃、組織的守備プレーの状況: 例(攻撃)プレーの前進 (守備)ファイナルゾーンの守備 1. どこのゾーンからプレッシャーをかけているのか(例:グランドを横に分割して、自陣からzone 1, zone 2 zone 3 zone 4) 2. マークの種類(マンツーマン、ミックス、コンビネーション) ※ミックスディフェンスとは、自身のゾーンに入ってきた相手選手をプレーが途切れるまで、マークします。 ※コンビネーションディフェンスとは、例えば、ゾーンディフェンスとマンツーマンの併用等です。 3. 攻撃の構造(フォーメーション例:4−3−3、4−4−2) 4. 守備の構造(フォーメーション例:4−1−4−1、4−5−1)モーメント:守備から攻撃への切り替え、攻撃から守備への切り替えプレーの状況:例 (攻撃)カウンターアタック (守備)プレッシング 1. どこのゾーンでボールを失ったか/取り戻したか(例:zone 1, zone 2 zone 3 zone 4)。 2. どこのレーンでボールを失ったか/取り戻したか(例:グランドを縦に分割して、センター、左サイド、右サイド) 3. スペース ・どこのラインでボールを失ったか/取り戻したか。例:MFライン ・MFラインのどのポジションの選手がボールを失ったか/取り戻したか(例:ピボーテとMFインテリオールの間)。 4. プレッシャーがあるか、ないか(例:ピボーテがボール保持者にプレッシャーをかけ、ボールを取り戻そうとしている) 5. オフェンシブ・ポジション(Disposición Ofensiva)。守備時にOFラインの選手が攻撃への準備をするためのポジションを取る。 6. 攻撃時のフォーメーション:例 4−3−3ここまで、一通り「どのプレー状況で、どこで、誰が、何を、どのように行っているのか」洗い出します。その上で、例えばAmenaza(自チームにとって脅威になること、相手チームの強いところ)を分析します。例:相手チームのトップ下が自チームのMFとウイングとの間のスペースの「ライン間」でボールを受けてシュートまで持ち込むプレーが何回もある。ここで大切なことは、Amenazaを1つか2つに絞ることです。もっとも多いAmenazaを分析し、そのプレーに対しての対応策を考えます。対応策をどのように考えるかは次回に書きたいと思います。
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スぺインサッカーコード:コーチングスクール(レベル3)で学んだこと〜Metodología(メソッド論) 3〜
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スぺインサッカーコード:コーチングスクール(レベル3)で学んだこと②〜Metodología(メソッド論) 3〜
前回、バルサ・フベニールA(19歳以下)のスカウティング担当者(元コーチングスクールの先生)から、その試合(バルサ・フベニールA対エスパニョール・フベニールA)のビデオのデータをもらったことを書きました。実はその時、コーチングスクールの先生が、試合後、私たちレベル3の生徒が、スカウティング担当者に質問する機会を設けてくれました。生徒の一人が「なぜ、バルサの中盤の守備が良くなったのですか?特に、攻撃から守備への切り替えが良くなったように思います」と質問しました。この試合、バルサが後半に3点を入れて、4対1(前半1対1)で勝ちました。スカウティング担当者「ハーフタイムに監督のガブリ(元バルサの選手)は守備のことについては、あまり指示をしていなくて、攻撃についての指示が多かったよ。攻撃が良くなったから、守備が良くなったんだろうね。MFの選手が全体的に前にポジションを取るようになったから、プレッシングがかかりやすくなったのだと思う。ボールを失った時の守備の予測も立てやすくなったのだと思う。」私も一つ質問をしました。「自陣のzona 1の「ファイナルゾーンの守備」の場面で、なぜ、MFインテリオールの選手とウイングの選手の間の「ライン間」のスペースが空いているのですか?エスパニョールのトップ下の選手が何回もMFラインの間のスペース「ライン間」でボールを受けてシュートまで持ち込んでいましたね。」スカウティング担当者「試合前のミーティングでも、ハーフタイムにもウイングの選手に言ってるんだよ。MFとの距離を狭くして、スペースを相手に与えないようにすることはね。でも、バルサのウイングはグランドいっぱいに広がるだろう。だから、守備の時にMFとの距離も遠くなるから、戻ることができないこともあるんだよ。MFとの距離が開いていて、その間の「ライン間」を相手に使われてしまった時に、「やべぇ!」という感じで焦って戻るんだよ。」バルサ・フベニールAレベルの選手でもそのようなことがあるのだと言うことと、プロになるかも知れない選手でも、まだ、できないことがあって、様々なことを学ぶ必要性があるのだということを改めて気がつかされました。
CF Badalonaでの実習今シーズンはコーチングスクールの実習で、2部B(3部リーグ)のバルセロナ近郊のクラブCF Badalonaでスカウティングを担当してます。ほとんど毎週末、先の試合でCF Badalonaと対戦するチームの試合を録画し、分析するために、そのチームのスタジアムに行っています。※私の通っているコーチングスクール(CAR)では、レベル3の受講者は1 Catalana(5部リーグ)以上のクラブで200時間以上実習をすることが義務付けられています。ビデオを観て、様々なチームを分析していて気がついたことは、2B(3部)の選手でも、自分の役割を全うすることができない選手がいたり、ある時は自身の役割をしっかりと行い、ある時はサボっていたりする選手がいることに気がつかされました。今まで、ビデオを観て分析してきたバルサやバイエルン・ミュンヘンなど、その他多くのビッグクラブの選手はしっかりと自分の役割を全うすることができる選手であり、集中力を欠いてサボっている選手はほとんどの場面で見受けられませんでした。例えば、バイエルン・ミュンヘンのシャビ・アロンソは、分析する前はパスの非常に上手い、攻撃を構築する選手だと思っていました。試合を分析すると、シャビ・アロンソは、守備の役割をしっかりと全うし、守備のポジショニングのミスもほとんどなく、その上で、さらに自分の役割以上のことまで、臨機応変に守備に貢献する攻守にわたって素晴らしい選手であることが分かりました。私見ですが、プロ1部リーグで活躍する、活躍できる選手というのは、チームにおいて自身の攻守の役割をしっかりと全うできることが最低条件なのかも知れません。それができた上で、ドリブルが上手い、スピードがある、パスが上手いなど、自身のプレーの特徴を出すプレーが大切になってくるのだと思います。特に現代サッカーにおいてはチームにおいての自身の攻守の役割をしっかりと全うできることが重要視されているのだと実感しました。
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スぺインサッカーコード:コーチングスクール(レベル3)で学んだこと③〜Metodología(メソッド論) 3〜
前回、試合を分析するときにはDAFO(SWOT)分析を使うこと、どのように試合を分析するかを書きました。
D(Debilidad:弱み):内的要因(自チームの弱いところ)
A(Amenaza:脅威):外的要因(相手チームの強いところ)
F(Fortaleza:強み):内的要因(自チームの強いところ)
O(Oportunidad:好機、チャンス):外的要因(相手チームの弱いところ)4つのモーメント:「組織的攻撃、組織的守備、守備から攻撃への切り替え、攻撃から守備への切り替え」を分析するモーメント:組織的攻撃、組織的守備プレーの状況: 例(攻撃)プレーの前進 (守備)ファイナルゾーンの守備 1. どこのゾーンからプレッシャーをかけているのか(例:グランドを横に分割して、自陣からzone 1, zone 2 zone 3 zone 4) 2. マークの種類(マンツーマン、ミックス、コンビネーション) ※ミックスディフェンスとは、自身のゾーンに入ってきた相手選手をプレーが途切れるまで、マークします。 ※コンビネーションディフェンスとは、例えば、ゾーンディフェンスとマンツーマンの併用等です。 3. 攻撃の構造(フォーメーション例:4−3−3、4−4−2) 4. 守備の構造(フォーメーション例:4−1−4−1、4−5−1)モーメント:守備から攻撃への切り替え、攻撃から守備への切り替えプレーの状況:例 (攻撃)カウンターアタック (守備)プレッシング 1. どこのゾーンでボールを失ったか/取り戻したか(例:zone 1, zone 2 zone 3 zone 4)。 2. どこのレーンでボールを失ったか/取り戻したか(例:グランドを縦に分割して、センター、左サイド、右サイド) 3. スペース ・どこのラインでボールを失ったか/取り戻したか。例:MFライン ・MFラインのどのポジションの選手がボールを失ったか/取り戻したか(例:ピボーテとMFインテリオールの間)。 4. プレッシャーがあるか、ないか(例:ピボーテがボール保持者にプレッシャーをかけ、ボールを取り戻そうとしている) 5. オフェンシブ・ポジション(Disposición Ofensiva)。守備時にOFラインの選手が攻撃への準備をするためのポジションを取る。 6. 攻撃時のフォーメーション:例 4−3−33つの状況【チーム(11人)、グループ(5人以上)、個人(4人以下)】の行動(アクション)を分析する3つの状況の行動を分析し、「どの局面で、その瞬間、どのような行動(アクション)を「チームとして、グループとして、個人として」行っているのか、または行うべきかを明確にしていきます。チームの状況(集団プレー、11対11、完全な組織):行動(アクション):例 プレッシング局面(どの局面でその行動が行われているのか):例 攻撃から守備への切り替えの場面指示(スローガン):例:ライン間を狭くする(例:FWラインとMFラインの間を狭くする)。ボールをグランドのセンターで失った場合は、相手をタッチライン側に追い込むようにプレッシャーをかける。ボールを失ったゾーンの密度を濃くする(ボールを失ったゾーンに人数をかける)グループの状況(5人以上、相互関係のある部分(例:MFラインとDFライン):グループ戦術例:相手に抜かれた場合は、自陣ゴール方向への前進を許さない。タッチライン側に相手を追い込む。グランド内側へのパスコースを防ぐ。選手の状況(個人の技術、戦術、(部分 例:DF、DFライン):例:ディフェンスセンターバック:相手がシュートできるゾーンに入ってきたら、利き足ではない方の足でシュートするように方向づける。相手がロングボールをDFラインの背後に蹴ろうとしたら、後退する姿勢を取る。サイドバック:逆サイドにボールがあった場合は、近い方のセンターバックと同じラインの高さにポジションを取る。相手がセンターリングをする可能性がある場合は、できればタックルし、センターリングをさせないようにする。ディフェンシブMF:自分に近いMF選手のディフェンスのサポートに入る。MF選手をサポートするためにセンターのゾーンから出ないようにする(センター:ペナルティエリア幅)自身のゾーンにいる選手にパスが渡る可能性を減らすために、その選手を監視する。ウイング:ゾーンディフェンスをする。ボールがグランドのセンターにある場合、自身のゾーンにボールが入ってきたら、相手にプレッシャーをかける。相手チームにサイドチェンジをさせないように強いプレッシャーをかける。攻撃的MF:ボール保持者のパスの選択肢を減らすようにする。自身の近くでボールを失った場合、直ちにボール保持者にプレッシャーをかける。センターフォワード:カウンターアタックの準備をするために、オフェンシブ・ポジションを取る。相手のパスコースを限定するためにサイドへボール保持者を方向づける。上記のように、「チームとしての動き」、「グループとしての動き」、「個人の技術、戦術」を明確にして、「どの局面で、その瞬間、どのような行動(アクション)」を起こすかを具体的に明示し、各ポジションの選手が素早く行動に移すことができるようにトレーニングや試合を通じて獲得することが大事になります。トレーニングにおいては、「攻撃から守備への切り替えの場面」のトレーニングをするなら、そのトレーニングの中に、「ボールを取り戻した後、チームとして、グループとして、個人としてどのように行動を起こすのか」という「守備から攻撃への切り替えの役割」をしっかりと決めておくことも必要となります。それがチームの「プレーモデル」になってくるのではないかと思いますし、プロチームや高いレベルのチームはこのように役割を明確にして、迷わず、素早く行動できるようにしなけらばならないと考えます。ここまで、試合を分析し、各ポジションの動きを具体化しました。この次は、ペップ・グアルディオラも行なっているトレーニングメニュー作成法を書きたいと思います。フランシスコ・セイルーロ(元バルサ・フィジカルコーチ、現バルサ・メソッド部門ディレクター)のENTRENAMIENTO ESTRUCTURADO(構造化されたトレーニング)理論を応用したトレーニングメニュー作成方法です。私自身、まだ、理解が完全ではありませんが、どのようなことをやっているのか、その方向性だけでも示すことができればと思います。このペップ・グアルディオラも行なっているトレーニングメニュー作成法は、ほとんどのスペイン人監督は行なっていないそうです。それではまた次回に。
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スぺインサッカーコード:コーチングスクール(レベル3)で学んだこと④ 〜UEFAライセンスとアカデミック資格の違い〜
スペイン国内2つの制度スペインサッカーコーチングコース・レベル3では、 Desarrollo Profesionalというクラブのテクニカル・ディレクター(スポーツディレクター)になるための授業があります。この授業では、クラブのオーガナイズの仕方、組織の作り方、資格とライセンス制度について学びます。特に、ここ最近のスペインでは資格・ライセンス制度が毎年のように変化していくので、どうして良いか分からなくなるスペイン人もいます。アカデミックを受講してレベル2まで持っているけど、来年からはUEFAのライセンスコースを受講するという人もいます。現在、スペインで取得できる、サッカーコーチの資格・ライセンスは2つあります。
UEFAとスペインサッカー協会が主催しているコーチングライセンスこのライセンスはスペイン国内だけではなく、ヨーロッパで監督として指導することができるライセンスです。ライセンス制度なので、毎年、更新料100ユーロを支払うことになります。スペインサッカー協会、各州協会(例:カタルーニャサッカー協会)とスペイン国家として主催している、アカデミック(学問)なコーチング資格取得コースこの資格はスペイン国内でのみ使用できます。他の国では使用できないということになっています。(他の国では、その国が単位の読み替えをしてくれるならば、使用できると思います。その国、その国よって違いがあるので)アカデミックコースは大学で取得できる資格のように学位なので、一度、資格を取得すると永久的です。私がスペインでコーチングライセンス受講を始めたときは(2013年9月)、コーチングコースを受講すると、「UEFA」と「アカデミック」両方のタイトルが取得できました。それが、2014年1月に、通達がありまして、今、コーチングコースを受講している者は、単位の読み替えをして、ヨーロッパで使用できる「UEFA」のタイトルにするか、単位の読み替えをしないで、スペイン国内だけで使用できる「アカデミック」のタイトルにするか、選択するようにと言われ、かなり混乱した状態だったのを覚えています。私たち、外国人(学生ビザでコーチングスクールを受講している者)は、UEFAライセンス取得に必要な書類である「永住許可証」がないとUEFA
ライセンスを取得できないことに変更になったので、「アガデミック」コースを選択せざるおえませんでした。今回の変更今回、このブログに資格・ライセンス制度について書いているのは、「UEFAライセンス」にまた、大きな変更があったからです。変更点:名称変更(2017−2018シーズンから変更)2017年まではモニトール、インストラクター、テリトリアル(州の)、ナショナル2017−2018から モニトール、ベーシック(Basico)、アバンサード、プロフェッショナル。上記のように変更になります。2017年まではこれと平行して、モニトールはUEFA C、インストラクターはUEFA B, テリトリアル(州の)はUEFA A, ナショナルはUEFA PROにそのまま移行し取得することができました。これが、2017−2018シーズンから、UEFAのライセンスを取得するには、クラブからの契約書か、オファーがなければUEFAのタイトルを取得できなくなりました。それも、その監督の契約年数が、UEFAライセンスの使用できる年数になります。契約が1年だったら1年、3年だった場合は3年です。例:2016−2017シーズン、UEFA PROを取得するには、スペイン国内でいうとヨーロッパの大会に出場するクラブ:チャンピオンズリーグ出場クラブ:
FCバルセロナ、レアル・マドリード、アトレティコ・マドリード、セビージャ:ヨーロッパリーグ出場クラブ:セルタ、アスレティック・ビルバオ、ビジャレアルスペインであれば上記のクラブでの監督の「契約書か獲得オファーを証明するもの」がないと、UEFA PROのライセンスは取得できないように変更になったのです。どうなるかというと、協会が主催するライセンスを持っているだけの人は、UEFAライセンスが発行されません。スペイン国内でのライセンスを持っているだけになります(モニトール、ベーシック(Basico)、アバンサード、プロフェッショナル)。自身がクラブと契約し、その監督が教えているカテゴリーによって、UEFAライセンスのレベルが変わります。ただ、「監督としての契約書か獲得オファー」があれば、ヨーロッパ中どこのクラブでも監督として活躍できるというのに変更はありません。例えば、スペイン人がドイツに行って、育成年代を指導するなら、UEFA C、B、Aかのどれかに該当すると思います。
UEFAライセンスとアカデミック資格との違い学習時間:
UEFA PROライセンス取得コースは400時間の学習があります(3ヶ月程度)。アカデミック・テクニック上級コースは875時間の学習があります(10ヶ月程度)。金額:
UEFA PROライセンス取得コース:1330ユーロアカデミック・テクニック上級コース:875ユーロ(公立、国立の場合)取得できる資格・ライセンス:
UEFA PROライセンス取得コース:ヨーロッパのどこでも使用できる全てのカテゴリーで使用できる監督ライセンスアカデミック・テクニック上級コースの資格:・スペイン国内1部リーグ(ヨーロッパの大会に出場するクラブを除く)までの全てのカテゴリーでの監督資格。・テクニカルディレクター(スポーツディレクター)の資格・小学校教諭の学位・体育大学卒業の学位とフィジカルコーチの資格上記のようになります。
Desarrollo profesionalの先生はカタルーニャサッカー協会のコーチングコースのディレクターでもあるのですが、彼が言うには、UEFAのライセンスは「mierda」だと言うことでした(スペイン語のわかる方はわかると思います)。なぜかと言うと、UEFAライセンスのコーチングコースの科目にJuego Colectivo(集団プレー)という、カタルーニャサッカー協会が考えた、最も重要な科目がないのです。なぜ、このJuego Colectivo(集団プレー)の科目が大事かというと、テクニックもタクティカも、メソッド論も、フィジカルトレーニングも、スカウティングも全てJuego Colectivo(集団プレー)の考え方があって初めて機能するものだからです。Juego Colectivo(集団プレー)はチームプレーを学ぶ科目であり、アカデミックなコーチングコースで最も授業時間数が多い科目です。これがないというのは、プレーモデルはどうやって作るの、サッカーの本質をどうやって学ぶのという疑問が湧きます。ただ、UEFAライセンスのコーチングコースには「ピリオダイゼーション」の科目があります。この科目はアカデミックにはありません。なぜ、ないのかというと、バルサのフィジカルコーチであった現バルサのメソッド部門ディレクターであり、大学教授でもあるフランシスコ・セイルーロのトレーニング理論「Entrenamiento Estructurado(構造化されたトレーニング)」をアカデミック・コースでは学んでいるからです。この「Entrenamiento Estructurado(構造化されたトレーニング)」は、バルサのカンテラであるフベニールから上のカテゴリーで採用され、あのペップ・グアルディオラもこの理論を採用しています。現在、バルサのフィジカルコーチである、ラファエル・ポルもフランシスコ・セイルーロの生徒でした。アカデミック・コースには、卒業論文(50ページ以上)がありますが、UEFAライセンスにはありません。アカデミック・コースでは卒業論文に2年間を費やす人が多いそうです。私も日本人なので、「卒論は来年度に持ち越して、もう一度入学手続きをして、卒論だけの料金を払って、卒論だけやっても良いですよ」と先生に勧められました。完璧なスペイン語か英語で書かなければならないので時間はかかります。アカデミック資格の方には、人によって様々な考え方があると思いますが、レベル3(テクニック上級コース)を取得すると、「テクニカルディレクター」の資格もついてきます。個人的には、これから日本のクラブでも「テクニカルディレクター」が最も大事なポジションになるのではないかと考えます。監督ができることというのは自身のチームに影響を及ぼすことですが、「テクニカルディレクター」の仕事は、クラブ全体の方向性を決めることです。クラブのプレーモデルだったり、クラブのオーガナイズだったり、選手の獲得に到るまで、クラブ全体を指揮するのです。アカデミックコースでレベル3を受講するとスペイン国内でという制限はありますが、どこのクラブでも「テクニカルディレクター」を務めることができます。素晴らしい資格であると考えますし、クラブをどのように運営していくのかということを学ぶことができるので、非常に有用だと考えます。もし、日本からスペインにサッカーを学びにきたいと考えている方の参考になれば幸いです。
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スぺインサッカーコード:コーチングスクール(レベル3)で学んだこと〜授業の終了と卒論の始まり!!!〜
スペインサッカーコーチングコース(レベル3)の授業の終了!と卒論の始まり!
Juego Colectivo(集団プレー)の課題を先生であるセサルにメールで提出し、先にメールで提出済みのPreparación Física(フィジカル・トレーニング)とタクティカの課題が合格していれば、コーチングコースの授業の全てが終わります。昨年の9月に始まり、本当に内容の濃い、ハードな9ヶ月間でした。と同時に6月14日までに提出することになっているProyecto grado(卒論)の提出を今年は諦め、来年の提出に向けて頑張ろうと思います。卒論がなぜ、そんなに大変なのかと言いますと、最低50ページ以上、フォント、フォントの大きさ、書き方、言語(カタルーニャ語かスペイン語か英語)が全て決まっており、完璧な言語で書くことが合格ラインだからです。スペイン人でも、卒論は来年に回す人もいるほどです。この卒論を書くという作業は本を一冊書くようなものだと先生も言ってましたので、大変な作業になります。私自身、卒論のテーマは決まっており、少しですが、書き始めていました。これをコーチングコースの授業と並行して行うことはできませんでした。目標としては、8月中くらいまでに卒論を書き上げ、残りの期間は卒論の修正に努めようと思っています。今シーズンを振り返るとレベル3を受講したことで、本当に実践的で深いサッカーの本質を知る学びが数多くありました。実習では2B(スペイン3部)に所属するCF Badalona(バダロナ)のトップチームでスカウティングを担当しました。CFバダロナに今シーズンはスカウティング担当者が不在であったので、監督、コーチ陣に喜ばれました。スカウティングの仕事は、主に次に対戦する相手チームの試合を相手チームのスタジアムに行き試合を録画し、分析して、動画を編集し、それを10分程度のPWPにまとめて、監督に提出するパターンと、ビデオを撮らずに、スタジアムに行って、例えば、相手のディフェンスだけを分析するということをやりました。その他に、CFバダロナトップチームの試合を録画し、それを分析することも行いましたが、主な仕事としては、相手チームの分析を1シーズン通して行いました。2Bとはいえ、このグループにはFC Barcelona BやValencia B, VillarrealB, EspanyolB, Mallorca B, Levante Bなどのスペイン1部リーグに所属している、していたクラブのBチームがひしめき合う、本当に競争が激しいリーグでありました。特に分析をしていて興味深かったのが、やはり、FCバルセロナB、次にValencia Bが本当に勉強になりました。FC Barcelona Bのプレーの前進のレパートリーの豊富さは目をみはるものがありました。コーチングコースの方はレベル3ということもありますが、先生方の本気の授業を体験することができました。レベル1や2でも、当然、本気でやっていると思いますが、レベル3にきてやっと、先生自身が考えるサッカーの本質について語ってくれたように感じます。これが俺が話したかったことなんだと言うような感じです。生徒も方もレベル3になると、レベルの違いが出てきます。レベル1、2までは頑張って勉強して、用語などを暗記することでテストで良い点数が取れると思います。レベル3になるとテストはほとんどありません。その代わり、試合の分析やPWPを使ったプレゼンテーションが中心となるので、サッカーというスポーツを本当の意味で理解していないと実力に大きな差が出てきます。レベル3になると個人のサッカー観が形作られて行くのを感じました。それはサッカーの原則を知った上での、自身のサッカーのオリジナリティです。これは不思議な体験でした。コーチングコースで学んだことの上に自身のオリジナルなサッカー観が出来上がります。このオリジナルなサッカー観は、実戦で使えるもの、使えないものも多々あると思いますが、このような自身の考えに基づいたものを実践して行くことでスペインサッカーは発展してきたのではないかと考えます。タクティカの課題は自身の「プレーモデル」を作りました。これも自身のオリジナルなサッカー感を表現するのに最適な場所でした。「プレーモデル」は一つではなく、バリエーションを持つことが大事だということも学びました。相手チームの実力、攻撃、守備の方法、攻守の切り替え、グランド状況など様々な要素を自チームの「プレーモデル」と照らし合わせ、週末の試合はこの「プレーモデル」でやるというようにすることが大切です。例えば、FCバルセロナと対戦するなら、相手GKがボールを保持したら、高い位置でマンツーマンディフェンスをするが、もし、それを突破されたら、バルサは「プレーの前進」がうまいので、中盤でのディフェンスは放棄して、自陣のゴール前まで下がってディフェンスをしようだとか。相手が「カウターアタック」が得意なチームであれば、いつもは高い位置でボールを奪われたら、すぐに「プレッシング」をかけるけど、この試合は一度ハーフラインまで全員が「後退」して守備組織を整えてからディフェンスをしようなど、相手チームの「プレーモデル」と「強み」と「弱点」と照らし合わせ、どのプレーモデルを選択するかを考えます。そのためには、2つ3つ「プレーモデル」のバリエーションを持っていた方が良いかもしれません。その相手の「プレーモデル」や「強み」「弱点」を知るためには相手チームの分析が大事になります。「卒論」は残っていますが、サッカーについて深く学ぶことができて、バルセロナに来て本当に良かったと思います。でも、ここで立ち止まることはできません。サッカーは絶えず、進化して深化しています。何歳になっても貪欲にサッカーを学ぶ姿勢を持たないと知らないうちに、世界の最先端なサッカーから取り残されてしまいます。言い方は悪いかもしれませんが、スペインにいるとファッションのように毎年サッカーが少しずつ変化して、流行ができて行くのを感じます。どのチームの監督も自身の「プレーモデル」を微調整して、新しいものを取り入れているように感じます。スペインに来て、コーチングコースを受講する前は、自分はサッカーというスポーツをある程度理解している、知っていると思っていました。それがコーチングコースで日々学んでいる中で、自分が「サッカーについて何も知らないことに気がつきました」。ソクラテス風に言いますと「サッカーを知らないことを知らなかった」のです。本当に無知とはこのことだったと自分の今までの行動を振り返って恥ずかしくなりました。そのことに気がついてから、サッカーについて、いえ、フットボールについて一から学ぼうと考えるようになりました。自分のオリジナリルな「サッカー感」や「プレーモデル」を持つのは大事です。その自身のオリジナルなものはサッカーの原理・原則を知った上でのものでなければなりません。その上で、ドリブルサッカーでも、パスサッカーでも、なんでもすると良いと思います。コーチングコースのトレーニング理論の授業で、先生のダビがある生徒に言いました。「君の意見はわかる、でも、それはなんの意味もないことだ、本や論文に書いてあることなのか、それとも有名な監督が実践していることなのか、誰がその君の意見が正しいことを証明できるんだ。」このダビという先生のもとフランシスコ・セイルーロ(元FCバルセロナフィジカルコーチ、現FCバルセロナメソッド部門ディレクター)のトレーニング理論Entrenamiento Estructurado(構造化されたトレーニング)を学びました。自分の意見を持つなら、それを証明しなければならない。僕はこう思う。私はこう思う。ではなくて、過去の書物から自身のアイディアを証明するものを探して理論づけて行くことで、自分のオリジナルな「サッカー感」や「プレーモデル」が形作られて行くと思います。
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スぺインサッカーコード:サッカーは試合に出場して学ぶ!
選手は試合に出場してサッカーを学ぶもうに2シーズン前になるが、私はCD POMARというクラブのプレベンハミンA(6歳〜8歳)の第一監督を1シーズンを通して行った。そこで、学んだことは、選手は指導者が教える、トレーニングすることでサッカーを学ぶものではなくて、試合、公式戦に出場してサッカーを学ぶものだということを身を持って体験し実感した。私のチームに8歳になる大きめで少し太った、初めてサッカーをするウーゴという子供が入ってきた。明るく、勇気があって、人の気持ちがわかる素晴らしい心持ちを持った子供であったが、初めてサッカーをするので、ボールを蹴ることができない、パスできない、空振りしてこける、ドリブル突破されてこける、それでも、めげずに明るく試合に臨む子供であった。最初のうちはあまりにも他の選手とのプレーレベルで差があり、試合出場時間も、みんなより、少なかったし、先発で出場することももほとんどさせていなかった。それでも、彼は明るくて、いつも試合前にはキャプテンに立候補する子供であった。そのシーズンは毎試合キャプテンを変えていた。スペイン人は全員キャプテンをやりたがるので。そのウーゴがキャプテンに立候補すると他の選手から「お前は先発しないんだからキャプテンにはなれないよ」とか「お前が試合に出ると負けるから出るな」みたいなことも言われていた。それでも、めげずに明るくプレーし、決定的な場面でミスを犯し、失点に絡んでいた(DFだったので)。トレーニングでも、ボールを蹴ること自体がまだできなかった。それが半年を過ぎた頃から、ボールをまだうまく蹴ることができないのだが、ディフェンスとして、相手の選手にドリブル突破されることが少なくなってきた。というより、他の選手よりも責任感が強いので、むしろ体を張ったディフェンスで良い選手になっていたことに気づいた。その頃から、チームのみんなに認められるようになってきた。私もウーゴにボールの蹴り方を教えることはあったが、彼は実践を通して、公式戦を通してどのようにしたら、相手を抑えられるのかを学んだと思う。その次の試合で、私はウーゴをキャプテンに指名した。ウーゴはとても喜んでいた。他の選手も喜び、みんなからよかったなと言われていた。知らないういちにチームメイトからも認められていたのだ。シーズンも残り2ヶ月を切った時に、テクニカルディレクターが私に、「ウーゴのお父さんは、レアルマドリーのカンテラ出身で、Bチームまでいったことのあるプロサッカー選手だったんだぞ、だから、ウーゴもまだ、うまくないけどきっと良い選手になると思うから、面倒見てやってくれ」みたいなことを言われた。ウーゴのお父さんは若く、いつもウーゴの試合をにこやかに、何も言わず、静かに見守る素晴らしいお父さんだなと思っていた。シーズン当初はウーゴが試合で全然ダメなので、ゴール裏で小さな声で指示していたけど。その時に感じたことは指導者というのは、チームを作ったり、選手を成長させたりすることもできると思うが、その力というか影響力はほんの少しである。選手は試合で学び、成長する。指導者がこの選手はまだ下手だからという理由で試合に出場させないと選手はサッカー学ぶことができない。トレーニングで学ぶことはほんの少しである。指導者ができることもほんの少しである。選手が成長するのは公式戦だ。指導者が選手を育てるというのは思い違いだと感じる。選手は試合で、学び成長し、自然に育成されていくのだと思う。指導者は選手に試合でプレーをする機会を与えることが、特に育成年代では重要だ。指導者の勝手な判断で試合に出場する、しないを決めてはいけないのだろう。その力を指導者は持ち合わせていない。選手は試合、それも公式戦で学び成長する。当たり前であるが、サッカーはプレーをして学び、成長するものだからだ。
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スぺインサッカーコード:オフェンス・ドリル① ~パラレロからの崩し〜
ドリル1:パラレロからの崩し①※パラレロ(Paralelo):タッチラインと平行に出すパスと、そのパスに対して斜め前方に動いてボールを受ける動き。斜め前方に動き出す選手はアーチを描くように動くと、中央へ切り込みやすい。ゴール前で4(OF)対4(DF)+GKになったと仮定します(サッカーは11対11で行うスポーツですが、11人だと動きが複雑すぎるので、4対4にしています)。下の図を見て、どのようにファイナルゾーン中央を攻略したら得点になると考えますか?相手ディフェンスはゾーンディフェンスと仮定しますが、相手がゾーンディフェンスだったとしても必ずどこかで、マンツーマンのような動きになる時があります。ディフェンスを攻略するには、ゾーンディフェンスをマンツーマンディフェンスのような動きにさせることが大切になります。マンツーマンディフェンスに仕向けることによって、ファイナルゾーンのどこかに、スペースと時間ができると考えます。(図はスペースが分かりやすいように、マス目になっています)図1、2を見て、CFWがパラレロの動きをしています。この動きでDFのマークを外すことができればシュートチャンスが得られます。もし、CFWをマークしていたDFがCFWの動きについていった場合、どのように相手DFを攻略したらシュートチャンスを得られると考えますか?(解決策はサッカーなので無数にあると思いますが、ドリブル突破などの個人プレーではなくて、グループ、チームとしてどのように相手DFを攻略するか考えて見てください。重要なことは「時間とスペース」です。私の解決策:図3図3では、パラレロの動きをしたCFWにパスをした選手が、CFWがいたスペースに入り込んで、CFWからのリターンパスを受けてシュートチャンスを得ます。図4
CFWからリターンパスを受けるために中央へ移動しましたが、相手の左DFがポジションを中央に絞ってグランド中央のスペースを塞ぎました。この場合の解決策としては、一度、後ろにボールを戻して素早く右サイドにボールを展開してシュートチャンスを得ます。この時、中央に移動した選手は相手DFをブロックして、右サイドの選手がフリーな状況でシュートチャンスを得られるようにすることです。コツとしては、中央の選手はポストになってボールを受けるようにして、相手を抑えると良いと考えます。図5もう一つの方法としては、相手を引きつけグランド中央へスペースを作るために、グランド中央にいる選手が「縦にマークを外す動き「Desmarque profundidad)」をして、グランド中央にスペースを作り、そこに後ろにいた選手が入り込んでシュートチャンスを得ます(右サイドの選手がスペースに移動してシュートでも良いと思います)。この場合は、背後にリスク回避の選手を必ず一人置くというキーファクターがあるので、右サイドの選手が後ろへ下がります。この動きは相手のカウンターアタックの予防とボールを失った際にできるだけ、素早くプレッシングを相手DFにかけることを目的としています。このようにして、攻撃をしていきますが、どれが正しくて、どれが間違っているというのはサッカーにはないと思います。相手のディフェンスがどのようにディフェンスをしてくるのか、どこに弱点があって、どの選手が強いのか、例えば、相手のCBがものすごく強いなら、サイドに引きつけて、そのCBが中央にいない状態でシュートチャンスを作ることも大事だと考えます。そのために個人はもちろんのこと、グループ、チームとしての戦術コード(プレーの選択肢)を多く持つことが大事になります。また、次回にこの続きを書きたいと思います。
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スぺインサッカーコード:オフェンス・ドリル ~サイドからのパラレロからの崩し②〜
サイドからのパラレロによる崩し「ファイナルゾーン」の「ゾーンディフェンス」を崩す方法で、最も良い方法は相手が「ゾーンディフェンス」を構築する前に素早い「カウンターアタック」でディフェンスを攻略することです。それは前提としてありますが、ここで書いているいのは「遅行」です。相手DFが組織を整え、攻撃側のチームも組織を整えてから行う攻撃方法です。基本的に「ファイナルゾーン」においての相手DFは「ゾーンディフェンス」で行われるチームが多いです。「マンツーマンディフェンス」がないわけでもないですが、ほとんど「ゾーンディフェンス」であると推測します。「マンツーマンディフェンス」と言っても自身のゴール前では、自身のマークを捨てでもゴール前を守ることを優先しなければならない場面があります(例えばシュート場面)。「ゾーンディフェンス」においても自身のゾーンを捨ててゴールを守るために、「マンツーマンディフェンス」をしなければならない場面もあります。ほとんどのチームが「ファイナルゾーン」で「ゾーンディフェンス」を行うと仮定して、その「ゾーンディフェンス」をいかにして「マンツーマンディフェンス」のように仕向けるかが鍵となっています。「マンツーマンディフェンス」でマークをするといういこは、相手チームは受動的なディフェンススタイルを取るということになります。攻撃側が動けば基本的にその選手についていく、ということは、どこかに「オープンスペース」ができるということを意味します。そこに素早く他の選手が入り込みシュートチャンスを狙う方法を提案します。※今回の図はペップ・グアルディオラがトレーニングで使用しているグランドのラインを参考にして作りました。右サイド、パラレロからの崩しドリル図1右WGはボールを保持したら、ペネトレーションを開始する。ここで大事なことは、右WGは、相手の左SBだけではなく、左CBをも自身に引きつけることが重要です。※ペネトレーション:相手のディフェンスの間に入り込むドリブル。
CFWと左WGはスペースを作るために、相手DFの視覚から逃れるためにDFの背後を取ります。
Q1:CFWがパラレロの動きをしました。相手DF2人を引きつけたボール保持者の右WGはスペースに動き出したCFWにパスをします。この後、どのように展開したら、シュートチャンスに持ち込むことができると思いますか?(但し、ドリブル突破などの個人プレーではなく、グループ、チームとして、どのようにして「ファイナルゾーン」でスペースを作り、そこに侵入していくかを考えてください。この図に登場していない、他の選手が出ててきても構いません。)図2例:図3
CFWにパスをした右WGが素早く、CFWが空けたスペースに入り込みました。CFWをマークしていた右CBの動きに注目してください。右CBがCFWの動きについていくことで、ペナルティエリア中央にスペースができます。もし、右CBがCFWについていかなければ、CFWはフリーでボールを受けることができ、決定的なシュートチャンスの場面を作ることが可能となることでしょう(オフサイドにならないようにパサーとタイミングを合わせてください)。この時、左WGは相手を左サイドに引きつけるように、右SBの背後をとり、ポジションを少しワイドに取ることが重要です。図4もう一つのオプション例として、左WGがCFWが空けたスペースに入り込み右WGからのパスを受けるか、もし、左WGが相手の右SBにマークされた場合は、左SBかもしくはMFが、ペナルティエリア左サイドに空いたスペースに素早く侵入し、決定的な場面を演出することができます。このように、一つの動き(パラレロ)から、起因する様々な戦術オプションを持ち、素早く相手DFの意図やポジショニングを察知し、予測していくことでシュートチャンスを作り出すことが可能になると考えます。
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スペインサッカーコード:〜指導者の4つの指導スタイル〜
指導者は演技する力が必要 〜4つの指導スタイル〜選手を指導する監督やコーチは自身のチームにどのような選手がいて、どのようなチーム状況で、プレシーズンなのか、シーズン中なのか、休み明けなのか、様々なチームの状況によって「4つの指導スタイル」を使い分けて、チームを指導することが大切だと考えます。本当は、6つの指導者のスタイルがあるのですが、重複するところもあるので「4つの指導者スタイル」とします。1. 独裁的、ワンマン、鬼軍曹タイプ(Autritario):
このタイプの指導者は日本にも多いと思います。例えば、ファン・ファールや元日本代表監督トルシエがそうです。シメオネは外見は独裁的に見えますが、指導スタイルを知らないのでどうなのでしょう。このスタイルを使う状況は、チーム規律がなく、チームが崩壊状態の場合、例えば、シーズン中成績が悪くて、監督が首になり、新しい監督が来た場合などがそうです。プレシーズン、休み明け、週明けのトレーニング、チームに喝を入れたい場合に使うと効果的です。このタイプは意思決定は一方的で全て監督が決めます。選手の私生活、プレーに取り組む姿勢、態度、チーム規律を作る時に最も適したタイプです。ペップ・グアルディオラがバルサの監督に就任した最初の日に独裁的、ワンマン、鬼軍曹タイプで始めたそうです。何をしたかと言うと、ペップ・グアルディオラがグランドに出てきた時に、薄ら笑いを浮かべていたコーチ陣2、3人がその場でグアルディオラから首を言い渡されました。このタイプは、例としては悪いですが、ヤンキーばかりいるチーム規律のないサッカー部の顧問になった時には非常に有効です。人の話をしっかり聞く態度がない、エゴイストばかりいるチームで「選手に考えさせる」「選手に選択肢を与える」「放任する」指導は適していません。と言うことは、自身の受け持っているチームの状況、選手によって、指導者タイプを使い分ける必要があります。良い点:チームに規律を持たせる。チームのボスは誰かはっきりしている。チーム内にグループや派閥を作らせない。チームを導くことができる。悪い点:選手が監督に依存する。チーム内にネガティブな環境ができる。シーズン中ずっとこのタイプの監督は薦められない。2. 選手に理解させる、説得力のあるタイプ(Persuasivo):
このタイプは選手との関係を重要視します。洞察力があり、理論的に話す力があります。チーム規律があり、監督の言うことにしっかりと耳を傾けることができるが、チーム一人一人のサッカー感がバラバラでモチベーションが低い時、エゴイスティックなプレーをする選手が多い時、自身の「プレーモデル」を選手に植え付ける時、チームの中で自身の役割が難しいと感じている選手がいる時などに有効です。選手に理論的に説明する、納得させる、説得できるように話すことができる、行動できることが重要です。選手が監督が求めるプレーをした時などに、賞賛する、褒めるなどのフィードバックがあると良いと思います。プレシーズンやシーズン初め、週の半ばのトレーニング(水、木)に使うと良いと思います。良い点:色々な方法がある中で一つの方向を目指すとき。チーム内に特別な能力のある選手がいる場合。選手と監督の連携強化。悪い点:監督の意思決定が相応しくないとき(指導スタイルの切り替えの時)選手が監督に依存する。選手と監督との関係が良くない時。3. 民主主義的タイプ(Democrático):
例えば、カルロ・アンチェロッティ。このタイプは選手の話をよく聞きます。対話を重要視します。選手一人一人を平等に扱い、選手一人一人がチームの一員である意識を持たせ、選手に意思決定をゆだねます。チームの約束、選手と監督の約束、選手同士、選手と監督やコーチ陣の連携を大事にします。このタイプの指導者が最も良いように感じられます。私自身もできれば民主主義タイプの指導者として、指導できたらな思います。チーム規律があり、チームプレーができるようになり、「プレーモデル」に忠実にプレーできるようになっている場合に有効です。ここまできて「選手に考えさせる」指導が効果を発揮します。チームの中で個人の特徴やイマジネーションを発揮し、チームを進化させることができると思います。シーズン半ばや試合2日前のトレーニング(金曜日、試合が日曜日だとして)にこのタイプを使うと良いと思います。良い点:チーム、グループ内のモチベーションが高まる選手と監督の関係が良くなる。質の良い意思決定が生まれる。悪い点:チーム内にヒエラルキーの違いができる。選手が監督より、上になることができない。4. 寛容、放任主義タイプ(Permisivo):
このタイプは、選手もチームも成熟している場合、ベテランぞろいのアマチュアチームに用いると良いと思います。試合前日のトレーニング(プレッシャーのかかる試合前)、シーズンの終わり、プレッシャーのかかる試合がない場合に適しています。選手に自由を与え、自由に意思決定させます。監督は必要な時にだけ、意思決定を下します。良い点:チームに静寂をもたらす。試合前の緊張を取り除く。悪い点:チームや選手が十分に成熟していなけらばならない。エゴイスティックな選手が出てこないように注意する。以上の4つはあくまでも例です。チームの目標を達成するために、どのような指導者のスタイルが適しているか、考えることが大事だと思います。指導者のスタイルに、これが絶対的に正しいというようなものはないと考えます。例えば、スペインでも、トレーニングで頻繁にプレーを止めて指導する監督もいますし、トレーニング中はほとんどプレーを切らずに指導する人もいます。その指導者にあった、選手がチームが成長し、試合に勝つことができるなら、指導スタイルはどのようなものでも構わないと思います。ただ、上記の4つの指導スタイルを理解することによって、チームの状況や、時期によって指導スタイルを変化させ、チームをより素晴らしいチームに導く指導者になることができるのではないかと思います。
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スペインサッカーコード:「ロンド」はただのウオーミングアップや遊びではない!
「ロンド」のトレーニング効果を考えるどこのチームでも、円になって中にディフェンスを入れて、例えば、ワンタッチ限定で8対2、6対2、4対2、4対1、5対2等の「ロンド」をするチームが多いと思います。スペインでも、トレーニングのウオーミングアップの一環として、「ロンド」をどのチームも行なっています。私が前に所属していたクラブ(CD Pomar)でも、「ロンド」は必ずトレーニングに入れるという義務がテクニカル・ディレクターからシーズン前、最初のミーティングで通達がありました。そんなに重要な「ロンド」がただの「ウオーミングアップや遊び」の意味しかないわけがないと考え、色々と調べたり、考えたりしました。例えば、8対2(オフェンスがワンタッチ限定)のロンドを考えてみます。10m × 10m
ルール:ディフェスの2人はボール触れるだけではなく、パスをインターセプトする。インターセプトした選手とパスを奪われた選手が入れ替わる。20本パスをディフェンスにボールをインターセプトされないでつないだら、ボールを手で取ってオフェンス選手が拍手する。その後、ロンド再開、ディフェンスはそのまま変わらない。1番目のパス:ボール保持者の隣にいる選手へのパス(相手ディフェンスを超えることがない、試合中、危険回避の後ろへのパスや横パスに相当します)2番目のパス相手ディフェンス2人を超えるパスですが、相手ディフェンス2人の間を通すパスではありません(試合中、斜め前方への深さのあるパス、プレーを前進させるパス)3番目のパス相手ディフェンス2人の間を通すパス(試合中、縦に深さのあるパス、プレーを前進させるパス、ゴールの意味もあると思います)プレー中にボールの動きに合わせて、身体の向きを変えるトレーニング効果、正しいポジショニングを取り、パスコースを作るという狙いもあります。ボール保持者に近づいて、相手ディフェンスを引きつけたところで、逆サイドに展開するプレーも身につくことでしょう。このロンドの目的は、相手のディフェンス2人の間にパスを通すことです。オフェンス個人技術(COORDINACIÓNコーディネーション能力):素早く正確なショートパス、アジリティ個人戦術(COGNITIVO 認知):幅を取る、深さを取る、マークを外す、相手をボールに引きつける、サイドチェンジディフェンス個人技術(COORDINACIÓNコーディネーション能力):タックル、インターセプト, アジリティ個人戦術(COGNITIVO 認知):マーク、カバーリングコンディショニンング(CONDICIONAL)の側面:選手のスピード状況判断のスピード、意思決定のスピード、アクションスピード
SOCIO-AFECTIA (社会感情の共有):
SOCIO-AFECTIVA (社会感情の共有)とは、チームが社会であり、チーム内の選手同士で起こる感情の共有がサッカーやその他の集団スポーツに必要であるという、フランシスコ・セイルーロ(元FCバルセロナフィジカルコーチ、現メソッド部門ディレクター、バルセロナ大学教授)が集団スポーツに取り入れた概念です。そのSOCIO-AFECTIVA (社会感情の共有)の下位にAYUDA MUTUA(相互依存)というのがあります。このロンドは、10m ×10mの正方形の中に8人のオフェンスと2人のディフェンスが入っています。8人のオフェンスは全員ボール保持者の近くにいるので、AYUDA MUTUA(相互依存)の関係であると言えます。
AYUDA MUTUA(相互依存)の下位の一つにノンバーバルコミュニケーションというのがあります。サッカーというスポーツはノンバーバルコミュニケーションの特徴を持つスポーツなので、目で合図したり、味方のちょっとしたジャスチャーを理解する必要性があります。ロンドもこのノンバーバルコミュニケーションの特徴を持ったトレーニングなので、SOCIO-AFECTIVA (社会感情の共有)もトレーニングされることになります。サッカーのトレーニングをするときには、できるだけ、技術、戦術、コンディショニンングと一緒にこのSOCIO-AFECTIVA (社会感情の共有)の要素が入ったトレーニングメニューを作成することが重要となります。
EMOTIVO-VOLITIVO (感情と意志):選手がトレーニングの意図を知り、そのトレーニングの状況に適応する力を養います。例えば、オフェンスだったら、3番目のパスを通して、20回連続でパスをつなぎたい。ディフェンスだったら、3番目のパスを通させないで、なるべく早くボールを取り返したいなど、選手がトレーングの意図を理解し、ポジティブにトレーニングに励むようします。
CREATIVO-EXPRESIVO (創造性と表現力):例えば、イニエスタは様々な状況に対して、多くのプレーのアイディアを持ちそれを即興的に表現します。トレーニングメニューを作るときに、選手の創造性や表現力を出すことができる、または、失わせないトレーニングメニューを作成することが大事です。ロンドのワンタッチ限定というルールは10m×10mの正方形だから、創造性や表現力を発揮できます。これが、グランド半面で同じロンドをしたら、選手の創造性や表現力は失われることでしょう。上記、フランシスコ・セイルーロが提案する「6つの構造」をトレーニングメニューに入れることが大事です。「ロンド」にはこの「6つの構造」が入っている素晴らしいトレーニングです。バルサのカンテラのコーチになる人は、元バルサの選手か、バルセロナ大学やコーチングコースでセイルーロのトレーニング理論ENTRENAMIENTO ESTRUCTURADO(構造化されたトレーニング理論)を学んでいる人がほとんどだと思います。その他、20回、30回パスを連続してつなげるための「集中力」も大事になります。バルサやペップ・グアルディオラのチームが毎日のようにこの「ロンド」をやっている理由がわかりますね。上記のことが「ロンド」に最低限含まれていると思います。ルールを変えることで、さらに修得できることは増えると思います。例えば、ディフェンスはボールをインターセプトしたら、ボールを失った選手以外のオフェンス選手にパスをしないとオフェンスの選手になることができないというルール設定にすると、そこに「攻守の切り替え」の要素も入ります。日々、トレーニングで行なっている「ロンド」ですが、トレーニングの意味、効果を知ることで、楽しみながらサッカーという複雑なスポーツを学ぶことができると思います。参考文献:
Spielverlagerung.com
http://spielverlagerung.com/2014/12/25/juego-de-posicion-under-pep-guardiola/
Francisco Serial-lo Vargas: Estructura Socio-afectiva, INEFC BARCELONA, 2004.
Francisco Serial-lo Vargas: La Preparación Física en Deportes de Equipo Entrenamiento Estructurado, Valencia, Junio 2002.
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