「ロンド」のトレーニング効果を考えるどこのチームでも、円になって中にディフェンスを入れて、例えば、ワンタッチ限定で8対2、6対2、4対2、4対1、5対2等の「ロンド」をするチームが多いと思います。スペインでも、トレーニングのウオーミングアップの一環として、「ロンド」をどのチームも行なっています。私が前に所属していたクラブ(CD Pomar)でも、「ロンド」は必ずトレーニングに入れるという義務がテクニカル・ディレクターからシーズン前、最初のミーティングで通達がありました。そんなに重要な「ロンド」がただの「ウオーミングアップや遊び」の意味しかないわけがないと考え、色々と調べたり、考えたりしました。例えば、8対2(オフェンスがワンタッチ限定)のロンドを考えてみます。10m × 10m
ルール:ディフェスの2人はボール触れるだけではなく、パスをインターセプトする。インターセプトした選手とパスを奪われた選手が入れ替わる。20本パスをディフェンスにボールをインターセプトされないでつないだら、ボールを手で取ってオフェンス選手が拍手する。その後、ロンド再開、ディフェンスはそのまま変わらない。1番目のパス:ボール保持者の隣にいる選手へのパス(相手ディフェンスを超えることがない、試合中、危険回避の後ろへのパスや横パスに相当します)2番目のパス相手ディフェンス2人を超えるパスですが、相手ディフェンス2人の間を通すパスではありません(試合中、斜め前方への深さのあるパス、プレーを前進させるパス)3番目のパス相手ディフェンス2人の間を通すパス(試合中、縦に深さのあるパス、プレーを前進させるパス、ゴールの意味もあると思います)プレー中にボールの動きに合わせて、身体の向きを変えるトレーニング効果、正しいポジショニングを取り、パスコースを作るという狙いもあります。ボール保持者に近づいて、相手ディフェンスを引きつけたところで、逆サイドに展開するプレーも身につくことでしょう。このロンドの目的は、相手のディフェンス2人の間にパスを通すことです。オフェンス個人技術(COORDINACIÓNコーディネーション能力):素早く正確なショートパス、アジリティ個人戦術(COGNITIVO 認知):幅を取る、深さを取る、マークを外す、相手をボールに引きつける、サイドチェンジディフェンス個人技術(COORDINACIÓNコーディネーション能力):タックル、インターセプト, アジリティ個人戦術(COGNITIVO 認知):マーク、カバーリングコンディショニンング(CONDICIONAL)の側面:選手のスピード状況判断のスピード、意思決定のスピード、アクションスピード
SOCIO-AFECTIA (社会感情の共有):
SOCIO-AFECTIVA (社会感情の共有)とは、チームが社会であり、チーム内の選手同士で起こる感情の共有がサッカーやその他の集団スポーツに必要であるという、フランシスコ・セイルーロ(元FCバルセロナフィジカルコーチ、現メソッド部門ディレクター、バルセロナ大学教授)が集団スポーツに取り入れた概念です。そのSOCIO-AFECTIVA (社会感情の共有)の下位にAYUDA MUTUA(相互依存)というのがあります。このロンドは、10m ×10mの正方形の中に8人のオフェンスと2人のディフェンスが入っています。8人のオフェンスは全員ボール保持者の近くにいるので、AYUDA MUTUA(相互依存)の関係であると言えます。
AYUDA MUTUA(相互依存)の下位の一つにノンバーバルコミュニケーションというのがあります。サッカーというスポーツはノンバーバルコミュニケーションの特徴を持つスポーツなので、目で合図したり、味方のちょっとしたジャスチャーを理解する必要性があります。ロンドもこのノンバーバルコミュニケーションの特徴を持ったトレーニングなので、SOCIO-AFECTIVA (社会感情の共有)もトレーニングされることになります。サッカーのトレーニングをするときには、できるだけ、技術、戦術、コンディショニンングと一緒にこのSOCIO-AFECTIVA (社会感情の共有)の要素が入ったトレーニングメニューを作成することが重要となります。
EMOTIVO-VOLITIVO (感情と意志):選手がトレーニングの意図を知り、そのトレーニングの状況に適応する力を養います。例えば、オフェンスだったら、3番目のパスを通して、20回連続でパスをつなぎたい。ディフェンスだったら、3番目のパスを通させないで、なるべく早くボールを取り返したいなど、選手がトレーングの意図を理解し、ポジティブにトレーニングに励むようします。
CREATIVO-EXPRESIVO (創造性と表現力):例えば、イニエスタは様々な状況に対して、多くのプレーのアイディアを持ちそれを即興的に表現します。トレーニングメニューを作るときに、選手の創造性や表現力を出すことができる、または、失わせないトレーニングメニューを作成することが大事です。ロンドのワンタッチ限定というルールは10m×10mの正方形だから、創造性や表現力を発揮できます。これが、グランド半面で同じロンドをしたら、選手の創造性や表現力は失われることでしょう。上記、フランシスコ・セイルーロが提案する「6つの構造」をトレーニングメニューに入れることが大事です。「ロンド」にはこの「6つの構造」が入っている素晴らしいトレーニングです。バルサのカンテラのコーチになる人は、元バルサの選手か、バルセロナ大学やコーチングコースでセイルーロのトレーニング理論ENTRENAMIENTO ESTRUCTURADO(構造化されたトレーニング理論)を学んでいる人がほとんどだと思います。その他、20回、30回パスを連続してつなげるための「集中力」も大事になります。バルサやペップ・グアルディオラのチームが毎日のようにこの「ロンド」をやっている理由がわかりますね。上記のことが「ロンド」に最低限含まれていると思います。ルールを変えることで、さらに修得できることは増えると思います。例えば、ディフェンスはボールをインターセプトしたら、ボールを失った選手以外のオフェンス選手にパスをしないとオフェンスの選手になることができないというルール設定にすると、そこに「攻守の切り替え」の要素も入ります。日々、トレーニングで行なっている「ロンド」ですが、トレーニングの意味、効果を知ることで、楽しみながらサッカーという複雑なスポーツを学ぶことができると思います。参考文献:
Spielverlagerung.com
http://spielverlagerung.com/2014/12/25/juego-de-posicion-under-pep-guardiola/
Francisco Serial-lo Vargas: Estructura Socio-afectiva, INEFC BARCELONA, 2004.
Francisco Serial-lo Vargas: La Preparación Física en Deportes de Equipo Entrenamiento Estructurado, Valencia, Junio 2002.
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